日本全国の限られた歯科医院には、THPなるトータルヘルスプログラムというシステムがあるらしく、(まあ、以前からあり、違う名前で公正取引委員会から注意勧告を受けていた物と同じかな)。北欧式とかあるが、北欧の大学の論文をあらかた調べたが見つけられなかった。全国、何何県ででは初めての認定医院、、と書かれているが、歯科医学会が認定しているわけでは無い。
そういう所から友人の歯科医院に、不定愁訴満載で流れてきた患者さん。患者曰く「魅惑的な夢のような広告」につい引かれ、あるいは他では(首都圏事例)、何かわからないうちにかなりの金額を支払い(混合診療なのかな?)サブスクのように含嗽剤を購入。今回のケースでは、1年ほど経過したが何か全く話が違うと、実は出戻って(笑)相談したと言うことらしい。
システム自体に異論は無いが、これ、保険診療でキチンと出来る事ばかり。細菌検査は必要なら行えば良い。薬物療法も必要なら行えば良い。何が普通の歯周病治療と違うか色々調べてみると秘密の「機能水」の存在が(笑)。20年以上前からこの手の「機能水」なる物はあり、当時は機能酸性水」からはじまり、「機能還元水」や「機能中性水」とか、まあ、電離水の類い。電解塩素イオンによる強い殺菌作用があることはその通りだが、作るのは機械を除けば殆どただなのでウチでは「機能中性水」は薬剤過敏の方に無料であげている(入れ物持参)。
この中で、活性酸素の云々が絶対出てくるんだが、よく考えてほしいのは、活性酸素から電子が飛び出し強い殺菌効果を出すためには、かなりの量のO2が必要なのだ。そもそもうがいを前提にした口腔内にはそんなものは多量にない。だからスーパーオキシドラジカルによる強い殺菌効果、果てはバイオフィルムまで破壊する、、なんて文言は嘘に決まっている。活性酸素フリーラジカルに関しては様々な研究が沢山あるので色々調べてみた。(自分のも含めて(笑))
さて、何でこういうシステムが重宝(?)されるのかの、そもそもを考えてみると、医院の差別化はもちろんだが、実は保険診療で当たり前にキチンと歯周治療を行っていない歯科医院が多過ぎるのだという実態に直面する。私の知る限りでも、歯科全体の1/4位がまともな歯周処置を行っているが、他は経営的な問題や採算が取れない、衛生士が確保できない、等などの理由でまともに取り組んでいないようだ。だからこう言うシステムの入り込む隙がある。やはりこう言うのはどこまで行っても患者不在の環境を作った歯科医師の責任なのだ。
そして、信じる物は救われるのだから、壺を買って歯周病を克服しよう!と同じロジックで、患者が色々な物を買う事に、全く違和感を覚えなくなるのも誰が悪いわけではない。そういう環境やシステムを作っただけの話なのだろう。
いつの時代も、物の所為にしがちで、これは核を含む武器の話にもなりそうだが、武器が悪いと言う理論は、人の暗黒面を隠す絶好の材料で、後で極悪兵器を作ったその人が反省したりして大笑いである。悪いのは人間の作るシステムなのだ。歯科だろうが社会だろうが戦争だろうが、ホモサピエンスがここまで生き残ってきた最大の暗黒面は本能闘争であり、その暗黒面を理解しない限り歴史は終わってしまうのと同じように、この手の歯科的トラブルもまた、背景の人々を理解し許容しない限り永遠と続くだろう。
ちなみに当院もまた、現症なら「パンパンに喉まで腫れた」明らかな蜂窩織炎の患者が、似たようなプログラムから抜け出て流れて来たが、その医院の優先順位が違うためにかなりの症状まで進んでしまったようだ。ウチでは当然勿論オーバーブック。他の患者さん達はアポイント時間どころじゃ無く待ち時間が増える。まあ、後医は名医と言われるのは嫌なので気をつけて抗生剤点滴4日間で何とか回復。この人のために自分の時間を割いて待ってくれた「お互い様」と理解しているの多くの素晴らしい社会的な患者には感謝なのだ。
私は、しがない、何でもできる頼まれたら断れないGP(笑)なんだと改めて考えてしまった次第。そんなウチから、こんな何でもありの現場の煩雑さに辛抱たまらず、口コミでさんざん悪態ついて(笑)綺麗に整理整頓された場所に憧れ流れ散った患者さん達もいるだろうから、宜しくお願いいたしますね。