8月 01, 2021

歯科医院の闇を垣間見る

 先般、1歳児の時から中学生頃まで当院に予防管理通院していた25歳の若者がとても久しぶりに来院し、帰省をしてきているのだが上顎の親知らずが痛いと。カルテを引っ張り出して2歳頃いやいやで歯ブラシ練習ばかりしていた子だ。

親知らずの虫歯がかなり進行していたので、いつから放置していたのか聞くとかなり前だという。なぜ近隣の医科医院に行かなかったのか訪ねると埼玉でも有名ななかなか予約が取れないという歯科医院がそばにあったので親知らずが痛いことを告げ、2ヶ月ほど予約待ちをして、2ヶ月前に訪ねたのだという。そして受診した時、抜歯したのは痛い方とは反対側の上下の親知らずを一度に抜いたという。先にやりましょうと言うことだったらしいが。詳細がわからないのでなぜそういうことになったのか想像がつかないが、なにかよくわからない。一度にやったのだから抜きやすかったことは確かだろうが。

次に行った際、担当ドクターが「虫歯が所々あるのだけれど、安いのにする?高いのにする?」。彼は就職したてである事もあり「コストがあまりかからない方を」選択した。一度に5〜6歯無麻酔で形成したらしい。痛くはなかった。そりゃそうだ。ホントに小さい。しかし、問題の親知らずは疼痛を何度か繰り返していた。そこは何もしていない。

私は口腔内を見た。審査診断して、痛いという親知らずはすぐに抜こうねと言うことですぐ抜いた。しかし、問題は他歯である。なんだこれは??基本大きなう蝕はありそうもない比較的衛生的な口腔内だが、小臼歯、大臼歯の咬合面に細い細いきらきらのアマルガムが。。。。咬頭脇の平滑面にもあちこちポツリこっちにもポツリとアマルガム祭り。凄いのは、古いコンポジットレジンと歯質の境界にあちこちポツリアマルガム。なぜアマルガムをこんな所に詰めるのか?

当院ではアマルガムを使用しなくなって早30年近くたつと思う。否定をしているのではない。久しぶりに新品のアマルガム充填を見たし、久しぶりにクソ充填を見た。そのドクター曰く「高いのはきれいに出来るからね」

某業界新聞のコラムで、保険診療における歯科金属の逆ざや問題が首都圏を中心に盛り上がらない話があった。問題は保険診療の否定の上にある現在の自費診療だから自費にすれば良いだけの話、そして保険はもっと劣悪なマテリアルで良いのだという、下衆の理屈に多くの歯科医師が共感しているという信じられない事実。100歩譲って、じゃあ、その話をする歯科医院は保険でも素晴らしいスキルを提供するかと言えばまるで駄目。だから自費診療でも、田舎者の私でさえ目を覆いたくなるような高額かつ超最低の補綴物に結構出くわす。東京で200万以上かけて治療したが全然咬めないので見てほしい、、なんて言うのは以前の私のクリニカルブログに載せてある。あれはほんの一例だ。

首都圏の歯科医院が競争激化や家賃高騰で疲弊して、保険ではろくな治療が出来ない、高額な自費診療だけが生き残る道、、というのは真っ赤な嘘だと思っている。そうではない歯科医師をそれなりに知っているからこそ私はこんな乱暴なブログを書けるのだ。本当に素晴らしいスキルを持って、他に追従を許さない知識を持って、真に歯科医療に向かった結果、自費で素晴らしい治療を行っている歯科医師がいるのも事実。

保険医を返上している自費の先生が言うことなら私は信用します。保険医のくせに保険を否定し、その上にある自費診療主張など卑怯千万。保険医を放棄してほしい。再建治療とは何者か、その松竹梅と保険診療とのベクトル線形代数(笑)をきちんと勉強していただきたい。でなければ、待っているのは歯科医療の「闇」の評価だけだろうか。そういえば10年ほど前、新聞クイントに同じようなコラムを書いたことがある。全く賛同されなかった。



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