アマゾンから「歯科医療後進国日本」という本が紹介DMで来た。アマゾンベストセラーになっている。以前買った本の関連として「こう言うのは如何?」というDMなんだけれど。興味があったので、紹介内容を読んでみた。不正確な書評は、たとえこのブログだろうとおいそれとは書けないので、注文してみた。だからまだキチンと読んでない(笑)。目次を見ただけなのだがちょっと気になるので。目次はまさに正しいことばかりと思います。あぁ、もう書いてるか(笑)。
何十年も前からこれ(日本の歯科医療)は言われてきたことなのだが、いつも私が言っているように、「だったら保険医やめなよ」という結論。数年米国の恵まれ過ぎた環境で勉学してきた米国帰りの米国かぶれの歯科医師はごまんと居て、今でも商業誌などで最先端治療やチャンピオン症例を次々出している。全く否定はしないし素晴らしいことだと思う。イニシアチブを持って若い歯科医師達が感化されそれに続くことを、私はなんとも思わないし、むしろ素晴らしいと思う。確かに自分も若い頃はそうであったように、何とかそのスキルを学習したいと、せっせと東京や大阪に通った。その費用たるや、多分数年の米国留学費用どころではないだろうな(笑)。だから、可能なら保険医じゃないとかそうなりたいが、隣家のおじいやおばあになんて言おうか(笑)。
が、しかし、それを隣家の仲の良いリタイヤして何年も経つおじいに提供することは出来なかった。カネがかかるからだ。その時の自分の選択肢は、隣のおじいも、地方都市の企業の社長も、皆患者として同列に扱いたいと普通に思っていた。だからウチの診療室は、「居心地の良い、高級なものもある、街の居酒屋食堂」で良いと。この本の筆者の言いたいことは「高級フレンチ専門店」の話なんだろうなと、漠然と思う。
街の食堂の親父を馬鹿にしてはいけない。薄利多売でも、限りある素材で寝る間も惜しんで仕込みに入り、せっかく来てくれた客に美味しい物を提供しようとする姿勢と哲学を否定してはいけない。もちろん高級フレンチも否定してはいけない。極上の材料を使い、海外で長い間スキルを磨きそれ相応の対価を請求することに何の疑問もない。
この本では、それ(大衆食堂)を否定しているのではないだろうか。私がそう感じるその背景には「手仕事の医療」(秋本秀俊 著)という、昭和の混沌期に歯科医療を見世物ではなく医療システムとして皆保険に組み込むことに尽力した人々の努力と苦悩が書かれている本の存在だ。筆者にはこの本を是非一読していただきたい。国民皆保険と歯科医療をどう組み込むか、その根本にあった日本人としての思いと、見え隠れするGHQの亡霊を是非読み取ってから考察してほしいと思った。この本の昭和の時代ですら、米国帰りの自称最先端歯科医師の現状否定が実に面白い。
我が国の歯科医療を切る前に、欧米の歴史的な苦悩も理解しなければ、例えば米国の歯科医療難民3000万〜4000万人を理解は出来ないだろうし(米国のドクターは、何度いろんな先生に聞いてもこの問題はノーコメント)、米国の診療室の前で客引きをする「弁護士」の存在も是非紹介していただきたい。米国の歯科医療費の90%が、米国の所得上位10%で消費される現実も。
EAOでのディナーパーティー。ルクセンブルクのインプラントおたくのドクターに、さんざん症例写真を見せつけられた後、他の治療の話になり、日本の歯科医療システムを教えたら目を見張り「素晴らしい!」と。所得格差を気にしない歯科医療の提供など、思いもつかないと。その時同席していたブラジルのドクターも同じ。スイスのドクターは、、国民が皆お金持ちなので興味なし(笑)。そして、ただし問題は、いかにそのシステムを向上させていくかの保険力やイニシアチブをとるドクターが、全体を考えるのか個人を考えるのかという話。実に面白かった。
私は、臨床37年、今でも思うのだが、米国の最先端の高額な治療を、何故国家の歯科医療政策に落とし込む先生がいなかったのか。この先生達はせこいんだろうなぁと思った時期も(笑)。一世を風靡したインフルエンサーたる先生方皆、肝心の未来に向けた国家的歯科医療システム構築に一ミリも関与していない現実。相互扶助という米国人の思いもつかないと言うか、絶対無理だと考えた皆保険(米国が日本に向けた試験運用だったんだけどね)に還元できなかったのか。
だから、日本の歯科医療を後進国だと言うのは40年言われ続けているわけで、新しいことではない。根本解決は、もう一度言うが「保険医をやめれば良いだけの話」という単純な話で。筆者が歯科医療後進国だと思っているのならなおさら。個人としての歯科では夢のような仕事でも、国家感としての米国の歯科医療システムは失敗しているのでは?米国医療はビジネスなんだもの。そして、もちろん、我が国は想像以上に自由なんですから。。。
あっ、保険医をやめない理由として、保険歯科医療(特に再建治療)を否定して自費を入れるという卑怯者は論外です(笑)。
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