ウチの施設に8年ほど入居していた方が、一昨日85歳でお亡くなりになりました。当施設で看取りまで希望されていたのですが、先月初め黄疸症状が酷く緊急搬送したところ膵臓癌からくる閉塞性胆管炎で。その後急性期病棟から他院の回復期病棟に移り、そこで膵臓癌の多臓器不全で最後を迎えた次第です。最後経管栄養を勧められたが患者が断ったという話を聞きました。
この方は8年前入居時、前病院で判断された経管栄養でした。その後当院の訪問診療にて、私やDHや施設スタッフと「口から食べるプロジェクト」をすすめ、1年後には経管栄養のチューブを外し何とか口から食べられるようになりました。体力はみるみる回復し、笑顔が見られ、意思表示がドンドン出来るようになってきたのは、やはり「口から食べる」ではなかったのでしょうか。
このブログでも何度か紹介しましたが、経管栄養から口から食べる所まで行くためには、医科主治医の協力がとても大切なのです。しかしかつて「俺の診断に文句を付けるのなら、もうこの患者は診ないぞ、死亡診断を書くのはオレなんだ」という心ない暴言も他の患者で受けたことがあります。文句を付けるのではなく、何とか口から食べられるようにしませんかという「患者」への提案だったのですが、その先生は自分の話にすり替えて激怒したようです。現場では良くある話かもしれません。歯科のくせに、、、と心の声が聞こえます。
摂食嚥下に関連する医科歯科連携はこれから益々重要になってきますが、医科の先生方の歯科への無理解の根底にあるのは「歯科」だからであり「口腔科」ではないからです。多分医科の先生方は歯科医師がどういうことを何処までしているのかご存じないことが沢山あると思います。青本の「医科の準用」項目は驚くほど沢山あります。厚労省が独自に判断して、法的根拠のない通知でその可否を決めているに過ぎません。残念ながら歯科医師側の思考はそこで止まっています。
私が歯科医師法17条の改定を強く希望する背景は、こういう細かなことが関係してくるので、なあなあで済まされる場合が多いのです。これが積み重なり歯科医師の大きな損失と患者の大きな不利益に繋がる場合があるのではないでしょうか。何よりも、当施設に入居していた8年ほどの間に、口から食べられるようになったこの方は、絶対に幸せだったのではないかと思っています。ご冥福をお祈りいたします。
0 件のコメント:
コメントを投稿