8月 05, 2019

日本の歯科医療はダメなのか?

先日、イギリスマンチェスター在住の方が、智歯周囲炎で来院された。上顎の智歯が挺出し、下顎の智歯部の歯肉を咬みこんで炎症を起こし、今まで何度か繰り返していたという。下顎の智歯は智歯で水平埋伏し、第2大臼歯の遠心根が左右とも吸収され処置不可能な状態。

炎症の処置はすぐ出来るが、下顎の埋伏智歯の処置や第2大臼歯の処置は、CT等で確認すると第2大臼歯抜歯後の智歯矯正で行くのがベストであろうと診断した。しかし、日本での治療期間はわずか10日ではいかんともしがたいので、とりあえず上顎の挺出した知歯を抜歯し、イギリスに紹介状を書こうか迷い、当人にマンチャスターやリバプール近隣での歯科治療継続を勧めた。

通常NHS加盟歯科医院はどんなに急性症状があってもアポイントは3〜6ヶ月待ちだという。しかも、そこの紹介がなければパブリックな口腔外科には受診できないという。それは知っていたので、「NHSでの治療は大変だよねぇ」と共感すると「知っているんですか?イギリスの歯科のいい加減さを!」と感激された(笑)。私の知人の何人かも、なかなかに酷い治療で泣かされ、結局プライベートクリニックで高額な(米国ほどじゃないけど)治療費を支払い処置をして事なきを得ている。

では、NHSの処置評価額はいかほどかと調べると、明らかに日本より随分と高いが、人頭制も有り年間の予算が決まっているので、まあ、大体年末月は休診となるケースがほとんどだろう。単価が高くなれば良いというものでもない。

日本のまじめな歯科医師は、その多くを保険診療の中でまかない、そしてその評価額が米国などに比較して安すぎると声を上げる。そりゃそうなのだ。チントンシャンと進む歯科は如何様でもなるだろうが、保険診療は社会保障であると言う大前提で進むため、思い通りにはならないケースばかりだ。
しかしよく考えてほしい。イギリスの彼はこう言った。
「イギリスのNHS加盟歯科医師は異常ににレベルが低いが、日本で時々こうやって処置を受けて思うのだが、日本の保険歯科医療は素晴らしいレベルを維持していると思う。」
なんということだろう(笑)。私も日本の社会保障の中での70点治療は悪くはないと思っている。100点目指すスキルを持ち合わせなければならないのは当然だが、それを何食わぬ顔して社会保障に昇華している日本の歯科医師のたゆまぬ努力が見えてきている。

日本の歯科はダメだダメだと言う前に、こうすればもっと良くなると言う発想と、色々比較したら世界一じゃないか、と言うことに気がつくことが出来ない歯科医師は、まるで自虐反日思想の輩に似ているから気をつけたい。

まあ、手に負えないのはどんな業界でも欧米かぶれだが(笑)。かぶれる前に自国をよく見るべしです。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                    

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