12月 09, 2021

歯科保険診療報酬アップが出来ないからくりを理解する

 もう算定できないが、コロナ臨時措置であるところの感染対策実施加算、医科歯科外来で5点、そして小児の場合医科100点歯科55点。この時の疑問は、初再診料の医科歯科の大きな差の疑問や、医科と同じ医学処置に対しての歯科点数の大きな隔たりと同じ感覚でした。この背景を理解しないと、どれだけ歯科診療報酬の具体的メッセージを国会に届けても無理な相談でしょう。日歯もそこはよく理解しているのでしょうから、近年の報酬改定は基本的にC区分がメインなのだと思います。

さあ。ではどういうことを覚悟していないから、無駄とも思える歯科診療報酬のアップ要求を、特に保団連は与党議員にすら働きかけずに、無能な野党と共闘して騒ぎ、出来もしない妄想で我々会員を騙すかのごとく、失敗の総括すらせずに「アベガー、スガガー」を繰り返すのか、ここで良く考察しなければなりません。日歯も、何かへの忖度をやめないと、財務省マターの診療報酬にメスを入れることは不可能でしょう。

歯科診療報酬の根本的なアップが不可能では無いかという理由が、私は2つあるように思います。

1つは歯科医師法の法律として宙ぶらりんな存在でしょう。100年以上前に作られたこの法律は、我々歯科医師の全ての仕事の法的裏付けであり担保となる物です。しかしよく読んでいただきたい。現代歯科とはかけ離れたかつての古代?歯科を彷彿とさせる旧法なのです。歯科医師が法的に担保されている歯科医業とは、第34条と第36条にある、充填(齲歯治療)」「歯科補綴」「歯科矯正」だけであり、医業に属する(歯科医業では無い)口腔外科的要素は法的には何処にも存在しないばかりか、その度の厚労省通達で処理されているというお粗末さなのです。そういえばかつて議員陳情で、当時民主党の某議員が「歯医者に全身管理なんかできるわけないだろう!」という暴言を吐きまして、私は二度とそこにはお邪魔していません。この方は医者なので、まあまあ、「エビデンスが無いんだよ歯科には!」と歯科医師を馬鹿にしている姿がありありなのでした。

全身管理出来ないらしい歯科医師は、何処の医科の科より多くの局所麻酔を使用し、感染対策は医科の数倍の対策を施し、様態急変に備えて様々なER薬剤と機器をそろえ万全の対策で外来を向かえているのですが、多分それもわからないのでしょう。その答えは「歯科医師法の曖昧さ」から全てきてるのでは無いでしょうか。医業の一部分として歯科医業の法的担保が存在していないことが、最終決定を鈍らせていると思います。その証拠に、どんなに口腔健康が全身健康と深い関係があるというエビデンスが出ても、直接それが診療報酬に反映された過去は無いと記憶していますが。

もう1つは、我々歯科医師の問題でしょうか。全国の歯科医院HPを見てみると一つの傾向が見て取れます。そしてそれは人口集中しているエリアでは顕著です。現行の保険診療システムの不備を突き、保険診療を否定し、良くない治療だと流布し、そしてその上に自費診療を成り立たせるという、日本独自の思考ベクトルでしょうか。過去、欧州の学会で地元の歯科医師と話をしていた際、割って入った米国の歯科医師もまた、ガバメントインシュアランスで歯科治療の殆どが出来る素晴らしさと供に、なにゆえそれを否定して保険診療では無い方法を選択させようとするのか理解出来ないと。実はそこにあるマテリアル選択の問題が保険診療の一番の弱点であり、それに伴うスキルの評価の低さもまた弱点なのだと説明しました。しかしまだ理解出来ないわけで、それなら私たちのように全て患者ににチャージすれば良いのでは無いかと言う話に帰結。それはそうなのだ。

我が国の保険診療が低レベルの物だとは到底思えません。低評価だからと、あえて低レベルにしている歯科医師がいることも承知しています。そして、それを否定するから歯科の自費治療があると言う現行歯科医療に対するパラドックスを回避する唯一の方法は「あなたが保険医をやめれば良い」ただそれだけでは無いのでしょうか?

保険医全体が一致して現行歯科保険制度の改善を、確固たる証拠で積み上げていけば評価は絶対に上がるのです。しかし、こういう自費に対する間違ったベクトルで歯科医師が一致できないから、歯科の評価は大きく好転はしないでしょう。低価格でボランティア的にこき使われていると思うのなら、保険医は辞退するべきですし、まじめに保険診療に取り組んでいる他の歯科医師に対しても失礼極まりないと感じないのでしょうか?最低だと思っている保険診療を担保に自費診療をするというふざけたマネはやめるべきでしょう。

最後に付け加えますが、基本的に知識もスキルも不足しているバカは論外です。